• TOP 
  • > コラム 

コラム

更新日:2014.04.08

脱「ヒューマニズム」?

 仲正昌樹先生編の思想史第二弾が出ました。
第一弾の『政治思想の知恵』では、比較的わかりやすい自由主義の系譜に属する思想家をとりあげました。
この本は、なじみのある思想家も多かったと思いますし、比較的思想(史)の構図がわかりやすかったのではないかと思います。
今回の第二弾『現代社会思想の海図(チャート) レーニンからバトラーまで』は、上記の思想史入門とやや毛色が違います。
ひとことで言いますと、本書に登場する彼/彼女らは、いわば「屈折した思想家」であります。本書でいう、〈脱〉「ヒューマニズム」ということの含意を、いま少し考えてみる必要がありそうです。
「ヒューマニズム」とは、端的に言うならば「近代と人間をたたえる賛歌(理性、自由、平等)の世界」と捉えることができます。彼/彼女らは、それに対して、そうだろうか!? 近代ヒューマニズムは、〈神〉の視点のもとにおかれたイデオロギーではないのか。また「資本主義」と「ヒューマニズム」は共犯的関係にあって20世紀の歴史が展開しているのではないかと。
はたして、手放しの人間讃美「ヒューマニズム」思想は、そのままのかたちで是認できるのか、生き残れるのだろうか、という、根源的な問いをわれわれに投げかけるのです。
それは、文明と野蛮の世紀であった20世紀の「それでもなんとなく明るい」思想そのものに、その「それでもなんとなく明るい」体制に抗して「その明るさはホンモノなのか」と問う懐疑的に紡ぎ出された言説であり思想であります。また、マルクシズムからフェミニズムへとつながってゆく思想は、つねに常識や自明性を疑う思想でもあります。
また、〈反〉ではなく〈脱〉「ヒューマニズム」というくくりで、彼/彼女らを紹介したのは、いわゆる「ラディカリズム」と関係があります。ラディカリズム=ラディカルな思想とは、根源的にものごとを問い直す思想=作業です。このようなラディカリズムの系譜を系統的に紹介した入門書はほとんどありません。
本書は、現代、とくに20世紀の社会思想のラディカリズムの海図(チャート)を描いた数少ない入門書です。ぜひご購読いただければ幸いです。

【秋山】 
現代社会思想の海図

<前のコラム | 次のコラム> | バックナンバー
 

本を探す

書籍キーワード検索

詳細検索

書籍ジャンル検索