書籍名 | 新現代法学入門 |
---|---|
シリーズ | 現代法双書 |
著者 |
西谷敏・ 笹倉秀夫編 |
判型 | 四六判 |
頁数 | 300頁 |
発行年月 | 2002年6月 |
定価 | 2,860円(税込) |
ISBN | ISBN4-589-02579-5 |
ジャンル | 法学一般 |
本の説明 | 「自己決定を行使する個人」を基軸に据えて、警察、裁判、企業、家族など身近な法の世界を同心円的に描く。目まぐるしい現代社会の最新の法現象を素材にした、学生だけでなく、一般社会人の興味も喚起する法学入門書。 |
目次 |
第1章〈自己決定と法〉を考える 1 はじめに 裁判所の動きは 人格権としての自己決定権 2 自己決定権とは何か ◆多様な自己決定権 私事との関係 他者との関係 秩序の形成 ◆自己決定権論の背景 ルーツ 日本での台頭 自己決定の阻害 新自由主義との関係 3 自己決定権の意義と課題 ◆自己決定権実現の条件ー「保護」と「支援」 自己決定権の人間像 支援のための制度 成年後見制度 ディレンマの中の自己決定 ◆自己決定権の限界ー自己決定権と「公序」 公序との緊張関係 家族という公序 公序の揺らぎ 第2章 〈消費生活と法〉を考える 1 はじめに 消費生活における契約 約款とは 2 約款の内容の認識 約款の拘束力 約款の開示 3 不当条項の予防と救済 ◆不当条項の予防 ◆不当条項からの救済 法律による効力制限 民法の一服条項による効力制限 例文解釈に上る効力制限 「作成者不利に解釈」の原則 4 消費者契約法による約款規制 不当な免責条項 不当な損害賠惜額の予定条項の無効 梢費者の利益を一方的に害する条項 5 自己決定、パターナリズム、共同規制 私的自治の原則 契約自由の原則 契約自由の制限 契約上義の原則 共同規制による契約自由の回復 第3章 〈家族と法〉を考える 1 はじめに 2 日本型家族モデルの特徴 ◆平等主義型近代家族モデルの採用 戦前の「家」制度 家族法の大改正 ◆日本における平等主義型近代家族モデルの問題点 平等主義モデルの不徹底性 家族の団体主義的性格 3 日本型近代家族モデルの変容 ◆一九九〇年代の制度改正への動向 公序としての家族の組み替えとその動揺 家族単位から個人単位へ ◆モデル変容の背景にあるもの 家族の個人化と多様化 九〇年代のシステム変容 4 展望ーこれからの「家族と法」はどうあるべきか 家族法における公序の意義 法律婚の意義 第4章 〈医療と法〉を考える 1 はじめに 2 医療技術と社会状況・思潮の変化の影響 医療技術の革新 社会状況・思潮の変化 3 いくつかの領域における例 ◆クリティカルな医療場面 侵襲の重大(クリティカル)な医療 ◆患者の人生のクリティカルな場面での医療 死に際しての独特の状況 出生に関しての問題 ◆慢性疾患の隆盛 キュアからケアヘ 在宅医療・看護 ◆医療過誤 医師に要求される注意義務水準 過失と因果関係の認定 新しい権利の設定 和解という手段 ◆医学研究、ヒト由来資料の遺伝子研究 ヒトを対象とした臨床試験 ヒト由来物質の利用 第5章 〈労働と法〉を考える 1 はじめに 2 労働法の基本的な考え方 労働の従属性 単独決定を規制する「外部の力」 3 日本労働法を支えてきた日本的企業社会の特徴 解雇権濫用法理 労働条件の弾力性 4 九〇年代以降の長期不況と労働関係の変化 5 解雇をめぐる議論 整理解雇が容易に? 批判論 解雇と法の役割 6 労働条件の不利益変更 就業規則改訂による労働条件切り下げ 労働協約改一竈に上る労働条件切り下げ 個別労働契約にもとづく労働条件の切り下げ 労働条件変更と労働法 7 労働関係と法の役割 労働法不要論のなかで 経済大国日本の位置 第6章 〈企業と法〉を考える 1 はじめに 2 特殊日本的企業社会とそれをめぐる法 ◆特殊日本的な企業社会の編成 企葉集団 企業系列 ◆企業と行政、企業と政治の関係 産業政策立法 政官財の癒着構造 ◆経済権力と経済法的規制 独禁法 会社法 中小企業等への支援 3 九〇年代における経済社会の変化と法 ◆企業、企業グループの再編=リストラの進行とリストラ支援立法 企業間関係の変化 リストラ支援の産業立法 会社怯領域における法「改正」 ◆規制緩和の進行と経済社会の変化 規制緩和と公共性の喪失 中小企業等支援制度の解体 規制の無力化 ◆九〇年代の変動の行方と経済法的規制 企業は解体するか コーポレートカバテンス論 企業活動の透明化 独禁法のあり方 健全な発展をめざして 第7章 〈社会保障と法〉を考える 1 はじめに 2 社会保障と社会保障法学の展開 3 規範的視角 社会保障の法理念 生存権の規範内容 4 財源の視角 費用負担 公費負担の限界 社会保険方式と税方式 5 民主主義の視角 民主主義の限界 打開策 6 社会保障法におけるパラダイム転換 法脚係の多面化 統合的視点としての個人 法政策論の重要性 第8章 〈治安と法〉を考える 1 はじめに 2 警察と市民 「頼もしい」警察 「抑圧する」警察 警察の民主化 ◆治安の担い手、警察を考える 組織の概要 戦前の警察 戦後の警察 主導権をめぐる争い マッカーサーの判断 「民主警察」の発足 3 児童虐待やストーカーをめぐる新しい問題 歓迎される警察? 民事不介入の原則 新たな立法 4 さいごに 第9章〈現代国家〉を考える 1 はじめに 2 国家は必要悪か 増大する国家 国家の危険性 3 二つの国家観念ーstato と res publica 対国家の闘い 二つの国家イメージ 日本語における国家 4 国民と国家ーnation と state nationとは 二つの理解 複雑なnation概念 ナチスの「民族共同体」 レー二ンの国家論 「人民」と「国民」 国家と国民の運命共同体 「祖国のために死ぬ」か? 5 国民国家と福祉国家 「福祉国家」としての資本主義国家 6 国民国家とグローバリゼーション 福祉国家の見直し 経済のグローバル化と反グローバル化 グ□-パル化の多文脈性 7 むすびにかえて 国家・市民社会・民主主義 「私たち」の国家として 日本国憲法の先駆性 第10章 〈行政と法〉を考える 1 いろいろな顔をもつ行政 身近な存在としての行政 多様な顔で現れる行政 行政の現代的な顔 2 行政の存在理由 日本国憲法 基本的人権の保障・実現と人権の価値序列および取捨選択 民主主義の実現 二つの公共性のせめぎ合い 3 行政改革の二〇年 行政の公共性をめぐる状況 九〇年代行革が掲げた課題 今日の行政の顔と公共性 4 「市民的生存権的公共性」の実質化 民主的行政改革の途 情報公開 住民投票 第11章 〈司法と法〉を考える 1 はじめに 司法の機能 「二割司法」 2 日本における訴訟率の低さ 訴訟率の国際比較 ◆日本ではなぜ訴訟が少ないのか 伝統的な法意識・法文化 利用しにくい司法制度 日本人と訴訟 3 司法の消極性と「裁判官の独立」 日本の裁判所の司法消極主義 司法の内部統制 「司法の独立」と「裁判官の独立」 4 弁護士人口の増加と公共的役割の維持 ◆法専門職としての弁護士 弁護士の特質 弁護士を取り巻く環境の変化 ◆弁護士増員をめぐる論争 弁護士増員論 慎重論は 弁護士増員と公共的役割を両立させる仕組み 5 司法制度改革の理念 最近の司法制度改革の動き ◆日本社会の「法化」と司法の役割 経済のグローバル化との関係 万能ではない「市場」 市民の積極的な活動 これからの日本社会と司法の役割 第12章 〈日本国憲法と国際社会〉を考える 1 はじめに 2 敗戦後の日本と国際社会 敗戦そして憲法誕生 「片面講和」のもたらすもの 3 占領の延長としての安保体制 矛盾する憲法と安保条約 再軍備への道 4 日本国憲法と国連憲章の精神 ◆世界のpeopleによる平和 歴史の幸運 憲法前文の主語は ◆国連憲章における紛争対処の精神 国連想章の新しさ 二つの例外 軍事への抑制原理 ◆憲法と国連憲章のズレ 安保ー不信の構造 5 変容する日米安保体制 六〇年安保改定 グローバル安保への変容 6 国連の「軍事による解決」の実像と変容 湾岸戦争と国連 安保再定義 7 恒久平和の構築と憲法 ◆国連の二つの顔 歴史的二面性 ヒューマン・セキュリティヘの転換 ◆ハーグ世界平和会議と憲法第九条 ◆グローバル安保への動き 日本の積極的姿勢 8 「防衛強化」の真相と深層 第13章 〈グローバル化と法〉を考える 1 グローバル意識の形成 グローバル化とは 地球環境の現在 グローバル化と法を考える視点 2 国際社会と国際法 国際法の誕生 国際法の基本構造 国際機関と国家主権 新しいアクターの登場 NGO 多国籍企業 3 人間の国際化から世界化へ なぜ人権の国際化か 国際人権法の形成 人権のグローバル化 4 秩序維持の国際法から紛争解決志向の世界法へ 自己決定と民主主義 国際法観の転換 終 章 〈最現代の法〉をどうとらえるか 1 はじめに 2 近代とはどういう時代か 「近代」を特徴づける要素 近代の変容 近代の光と影 3 近代法とはどういうものか、どう変わっていったか 近代社会を反映した近代法 近代法をめぐる合理化と人間化 自由権 自由権の「光」の側面 自由権の「影」の側面と社会権の登場 社会権の構成原理 新しい人権 新しい人権と憲法一三条 新しい人権と現代日本社会 自己決定権と新しい人間像 自己決定権と幸福追求の視点 4 その後の社会と法の状況 IT革命 グローバリゼーション 5 日本社会の変化 公共投資の限界 構造改革のもたらすもの 日本的経営のゆらぎ 市場競争と自己責任 今問い直すべきこと 事項索引 |