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コラム

更新日:2014.03.25

「日本の司法」のしくみと手続がわかる一冊

 「司法」、「裁判」入門の定番書はいくつかあります。
しかし、あえていうなら、これまでの定番書は、制度解説的要素が多く、ややもすると「司法」、「裁判」の平板な解説にとどまるものでした。
本書と他書との違いを一言でいいますと、本書『レクチャー日本の司法』には、民事、刑事を中心に各「手続過程」が書き込まれている、ということです。制度がわかっても、手続(過程)がわからないと、全体像がわかったとはいえないでしょう。
編者は、これを、「人・制度・手続」という言い方をしていますが、本書の特色はここにあるといってもいいでしょう。

 さて、私たちがよく使う言葉、「司法」、「裁判」、「訴訟」、… 何か似ていて、どこが違うのかよくわからない言葉ではありませんか。なんとなく引っかかりながら、やりすごしていませんか。たとえば、民事訴訟法の用語と刑事訴訟法の用語も、よく似ていても、次第に区分けされた用語となってきています。
詳しくは本書を読んでもらい、いろいろ調べてもらうとして、用語の意味も、何気なく使われている場合と、厳密に使われている場合がありますので、注意が必要です。本書は、そんな用語の相違にも注意しました。

 なお、「はしがき」の最後に出てくるCourtは、日本語では「裁判所」を意味します。
しかし、編者は、本来の語義である「人びとが集い何かを行う開かれた空間」と言う意味でのCourtに注目しています。「アジールとしてのCourt」という言い方をする論者(井上正三氏)もいます。
厳格な意味では、現代のCourtでは実体的にも手続的にも平等であり、公正な手続が保障されて、はじめて公正な裁判がなされると言われていますが、裁判に載せたからといって解決がつくかどうかは別問題です。当事者が調整しながら解決にもってゆく「調整的」手法も多くなってきています。これを「近代的裁判のゆらぎ」とみる論者もいます。
すなわち、「裁判」というかたちで紛争処理がなされる前に、当事者同士が話し合って解決するような紛争処理のありかたです(ADR=Alternative Dispute Resolution;裁判外紛争処理制度)。現在では、このADRも重要な役割を担っています。
このADRは本書第6章などの中で紹介しています。
ここでは、本書の「現代の司法」の動きの一例を紹介しましたが、他にも「現代の司法」には興味ある問題がたくさんあります。
現代の「日本の司法」がコンパクトに分かる、本書をぜひ読んでみていただければ幸いです。

【秋山】 
レクチャー日本の司法

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