■第4講 作業シート2の解答

草加事件民事訴訟における原判決と最高裁判決の比較
  原判決 最高裁判決
自白調書の信用性
判断ポイント



判断内容


判断内容
一般論 ?@ 少年ら6人が花子殺害という重大な犯罪事実についてそろって任意に虚偽の供述をするとは考え難いから、特段の事情がない限り、少年らの右自白は真実を述べたものと認めるのが相当 ?@ 任意性を失わせる事情が認められない場合であっても、重大な犯罪事実について共犯者がそろって虚偽の自白をすることは、必ずしもあり得ないことではなく、後記のとおり少なからぬ疑念のある少年らの自白の信用性の判断手法として相当であるとは認め難い。
虚偽自白の理由 ?A 重大な犯罪事実について虚偽の自白をする理由としては薄弱であり、また、アリバイに関する少年らの供述にも疑問が存し、自白が虚偽である旨の少年らの供述を直ちに信用することはできない。    




コンドームに関する供述 ?B 秘密の暴露にあたる ?A 秘密の暴露又にあたらない。
本件においては、そもそも、そのコンドームは発見されておらず、それが本件事件で使用されたことについても少年らの自白があるだけで客観的に何ら証明されていないのであるから、それは、コンドーム窃取との関係では秘密の暴露になり得ても、本件事件との関連では、そのころC男らがコンドームを所持していたとの供述を裏づけるものにすぎず、秘密の暴露にあたるということはできない。
ビデオテープに関する供述 秘密の暴露に匹敵する 秘密の暴露に匹敵しない。
E男が本件事件については強い関心を持っていたことを示すものではあるが、それ以上のものではなく、本件事件との関連で秘密の暴露に匹敵するものとは到底いうことができない。しかも、記録によれば、E男は、その録画当時、既に友人達から自分達のグループが犯人として疑われていることを聞いて知っていたこともうかがわれるのであって、その事件を報道する番組を録画したとしても格別不自然とはいえず、自白の信用性を高めるものということはできない。
実感性 ?C 少年らの自白中には、犯行中に実感したとしか思えない事実の供述と見ることができる箇所があり、これらを含む自白の信用性は高い    
否認後の自白に沿う供述 ?D 少年らは後日否認に転じた後も思わず自白に沿う供述をしており、このことも自白の信用性が高いことをうかがわせる B男及びC男の抗告審における供述は、少年らの自白に符合するものである    









結論   少年らの自白は、次のとおり、大筋において関連する客観的事実と矛盾するところはなく、信用性は高い。   少年らの自白には、自白を裏づける客観的証拠もほとんど見られず、かうって自白が真実を述べたものであればあってしかるべきと思われる証拠が発見されていない。
スカート6箇所にAB型の精液付着 ?E 必ずしも芳しくなかった花子の素行及び花子の着衣のうちスカートのみに精液が付着していたという状況にかんがみると、右精液は、事件とは別の機会に付着したものと推認することも可能であるから、右精液付着の事実は少年らの自白と矛盾しない ?H 本件事件が少年らの犯行であることが確認されているのであればともかく、単なる可能性があるからといって、少年らの自白と矛盾抵触しないということはできない。 花子のスカートにAB型の精液が付着し、そのシャツにはAB型の毛髪が付着していたこと、花子の左右の乳房から採取された付着物がいずれもAB型の唾液と認められることなどの証拠上明らかな客観的事実を考えあわせると、これらAB型の付着物は、花子の殺害に接着した機会に付着したものではないか、さらには、本件犯行は、血液型がAB型の者によるものではないかとの疑念を抱かせるものといわなければならない。
乳房付着の唾液がAB型 ?F 血液型がA型の花子の体垢と血液型がB型の犯人の唾液が混合したため、AB型と判定された可能性がある。 ?B 本件各証拠の下では、右付着物の血液型は、いずれもAB型であると認めるほかはない。そうすると、わずかな理論的可能性を根拠にB型の可能性があるとし、少年らの中に血液型がAB型の者がいないにもかかわらず、自白とは矛盾しないとした原審の判断は是認することができない。
?H 本件事件が少年らの犯行であることが確認されているのであればともかく、単なる可能性があるからといって、少年らの自白と矛盾抵触しないということはできない。
?E 花子の乳房をなめた旨のB男及びC男の自白は、客観的証拠に符合するものとはいえない。
花子のシャツ裏側の襟にAB型の毛髪が付着 ?G 事件と関係のない機会にこのような毛髪が付着することも考え得るので、少年らの自白の信用性を疑わせるものではない。 ?H 本件事件が少年らの犯行であることが確認されているのであればともかく、単なる可能性があるからといって、少年らの自白と矛盾抵触しないということはできない。
花子の処女膜が健存 ?H 処女膜が健存していたからといって花子が性交していないとは断言できず、また、未遂なのに既遂と誤信した可能性もあり、右の事実と強姦既遂の自白とは必ずしも矛盾しない ?D 陰茎の暴力的挿入がなかった可能性を否定することができず、陰茎を挿入した旨のA男及びC男の自白は虚偽である疑いが残るものといわざるを得ない。いかに性経験の少ない年少少年であったとしても、3名全員がそろって誤信したというのは甚だ疑問としなければならず、右判断は是認し難く、これらの点についても捜査官による誤導の疑いを払拭することができない。
自動車内から花子の痕跡未発見、北公園および残土置き場からも、少年らおよび花子が立ち入った痕跡未発見 ?I 事件後の自動車使用により痕跡が消失した可能性および北公園では清掃等により痕跡が失われた可能性、残土置き場では作業員がかきあげ作業を行っていることを考慮すると、それら痕跡が発見されないことは不思議ではない。したがって、それらの事実は少年らの自白の信用性に疑問を生じさせない。 ?F 捜査官により綿密な捜査が行われていることがうかがわれるにもかかわらず、未発見
犯行現場に関する供述の変遷 ?J 相談に基づいたり、少年ら各自の感情や思惑から虚偽の供述をしたためであり、捜査官の誘導があったとまでは認められないし、その後も自白を維持しており、その自白の信用性に欠けるところはない。 ?I 原審の判断は、少年らが供述調書において自白を変遷させた理由について供述したところをそのまま採用し、これに依拠したものと認められる。しかしながら、少年らの右供述は、必ずしも説得力のあるものではない上、右各供述調書が、いずれ少年らが初めて最終的自白をした際に作成されたものであることにかんがみると、右供述自体の信用性にもついても右自白と同様に疑いをいれる余地があり、自白の信用性が問われている本件において、特段の理由があれば格別、右供述をもって、捜査官の誘導を否定し、自白の信用性に欠けるところはないとする原審の認定判断は、是認することができない。特に、少年らの年齢等を考えると、少年らが捜査官が想定した状況に迎合した供述をしたと考える余地もあり、また、一部であるとはいえ、捜査官による誤導があったことは原審の認めるところ(原審?L)であって、自白の変遷についての原審の判断は、安易にすぎるものといわざるを得ない。
殺害態様や共犯者等、骨格部分に関する供述の変遷 ?K 本件事件が深夜暗闇の中で年少者が起こした強姦、殺人という重大事件であることを考慮すると、当時緊張と興奮の極みにあったと推認される少年らが犯行の一部始終を冷静に記憶していたとは考え難く、少年らの見誤り、記憶違いなどによって生じることが十分にあり得ることであって、右変遷があるからといって、直ちにその供述に捜査官の誘導があったとすることはできない。  
体内に精液が存在しない ?L ただし、花子の体内に精液は認められないので、姦淫の点は、誤った捜査情報を得ていた捜査官によって誤導され、作出された可能性が高く、信用し難い。 ?C 捜査官による誤導の疑いがある以上、B男の自白には、虚偽供述が含まれているといわなければならない。
ブラスリップに関する供述     ?G 少年らは、花子の首を絞めた際、花子が両手でかきむしるようにしてブラスリップをはずそうとしたと供述しているところ、花子の死体の頸部付近には傷痕が残されていないことなど、自白の客観的証拠との符合という観点から疑問とすべき点も少なくない。