2.コメントと解答

●問題提起について?@。
条文はだらだら写さないよう気をつけるべし。この問題を特にあたって必要なところがわかるよう、抜書きしたり、まとめたりする。

●問題提起について?A。
何が問題になるのか具体的に書く。ここが具体的に書けると、規範定立(法解釈)パートにすんなり入っていける可能性が高い。

●規範定立について?@。
みなさん、結論は決まっているようだが、その論証に難のあるものが多い。必要性や許容性についてたくさん書くのはけっこうだが、憲法33条が何を求めているのか、きちんと解釈しないと法的意見の表明にならない。必要性や許容性に関する論証は、その「解釈」が妥当であることを示すための理由なのだ。理由だけ書いて解釈しないのは本末転倒である。

●規範定立について?A
論理的に矛盾の見られる答案が散見される。いったん規範を定立しているのに、あてはめ・結論のところでは、突如全く異なる規範を導入しているというケースが少なくない。論理一貫した答案を書くべし。

●超優秀答案はなかった。以下に、最高得点をとった人の答案と、問題提起のパートが良かった人の答案を切り貼りしたものを示す。みんながなかなか書けないポイントは赤で強調しておいた。

●優秀答案例(Uさんの答案とIさんの答案をミックス)

 1.捜査機関が重大な犯罪を犯したという嫌疑が十分で、急を要するときには逮捕状なしで被疑者を逮捕することが認められている(刑訴法210条1項)。このことは、現行犯として逮捕される場合以外は令状によらなければ逮捕されない(憲法33条)という規定と矛盾しているようにみえる。このように憲法33条は緊急逮捕を明文で認めていないから、法解釈でこれを認め、憲法33条に合致するとできるかが問題となる。
 2.憲法33条とは、捜査過程での被疑者の人身の自由を保障する規定である。また、その趣旨は、逮捕のように人権に直接かかわる重大な行為の必要性を、権限をもつ司法官憲に事前に判断させるという令状主義を徹底することにより、不当な逮捕を防止して、捜査機関の権限濫用を防ぐというものである。
 この点、憲法33条の「令状によらなければ」とは「令状の根拠によらなければ」と解釈する説がある。「事後とはいえ、逮捕に接着した時期において逮捕状が発せられる限り、逮捕手続を全体としてみる時は逮捕状に基づくものということができる」とするものである(註1)。
 しかし、令状主義とは、権限濫用を防ぐために「事前の」司法審査を求めることに意味がある。その点緊急逮捕は逮捕の時点で令状がない点でこの趣旨をみたさず、また、事後に令状発付されなかった場合の説明がつかないと思える。
 3.これらの点からみると、憲法33条は令状主義により誤認逮捕を防ぎ捜査機関の権限濫用を防止するものにもかかわらず、刑事訴訟法210条は緊急逮捕の発令条件を厳しく定めているとはいえ、逮捕の時点で令状はなく、逮捕後に令状が発付されないことも予想しているので(註2)、憲法33条に反しているといえる。
以上
(註1)反対説を調査し、紹介したうえで、批判を加えるという作業を答案で明確に示している。すばらしい。
(註2)前にさんざん同じことを書いているので、ちょっとくどい。